もしも日本がウォーキングデッドの世界になったら

もしも日本が海外ドラマ「ウォーキングデッド」の世界になったらという妄想終末世界ブログ。

6.目的地

 

 

 

高速道路の陸橋を渡り終わると
急な斜面を登れば山へと繋がっていた。

 

3人で協力し、女性の父親の遺体を斜面の上まで無事に運ぶ事に成功した。

 

山に繋がる斜面の上から

今にも沈む夕日が見えた。


オレンジ色の空が
ピンクから紫色へとグラデーションのようになっていた。

 


「綺麗、、、」

女性はつぶやいた。

 

「ここに、、お父さんを埋葬しようかな。」

 

物悲しげに、でも、どこか決心したような強い意志を感じる。

僕らに始めて、彼女が微笑んだ顔を見せた瞬間だった。

 

 


「いいの?ここで。故郷とか、思い出の場所とかの方が、、」


僕は問いかけた。

 

「俺たちは君の望むとこまで、お父さんを運ぶのを手伝うよ。」


続けて医者の彼もそう言った。

 

 

「ううん、ここでいい。これ以上お二人に負担かけたくないし、、。ここがいいです!眺めも良いし、すごく夕焼けも綺麗。田んぼがキラキラ光ってる。その向こうに海も見えるので。」


彼女はさらに微笑んで言った。


「お父さんは、漁師だったんです。海がとても好きでした。でも、持病の悪化で定年を前に仕事を辞めなきゃならなくて。」


少し涙ぐんで続けた。


「私が中学生の頃にお母さんが死んじゃって、それからずっと男手一つで私とお兄ちゃんを育ててくれた。」

 

 


僕たちは彼女の話に、時折、頷きながら聞いてあげた。

 


「あ、ごめんなさい。長々と。夜になって暗くなっちゃいますね。」

 

彼女は話を終わらせ、シャベルで地面を掘り始めた。

 


僕たちが掘るから、休んでてと言ったが
彼女は自分も手伝いたいと言った。


ひとつのシャベルで、交代しながら穴を掘り続けた。

 

 

掘り終わる頃にはすっかり
真っ暗になっていた。


医者の荷物の中にあった
ランタンの光が照らす中、

 

付近に生えていた花をお墓の前に添え、
僕たちは手を合わせた。

 

 

 

「夜に山の中を歩き回るのは危険だ。今夜はここで夜を明かそう。」


医者の提案に、2人とも頷いた。

 

 

 

僕たちは円になってランタンを囲み、
僕が持ってきた菓子パンや缶詰を食べながら話した。

 

 


そういえば、まだ自己紹介もしておらず
名前も知らなかった事に気付き


簡単な自己紹介と、
これからの自分の目的地について各自話す事にした。

 

 


まずは僕から

 

名前は、倉井リク。31歳。
職業は、自動車整備士

目的地は、ここから60キロ先くらいの実家。

 

 

 

続いて、医者。


名前は、里嗣レン。34歳。
職業は、外科医。

政府からの通達により病院の閉鎖、患者たちは自衛隊の協力で避難場所へと輸送された。

その後、荷造りのため一時帰宅した後、政府関係、自衛隊との連絡が途絶えた。

目的地は、患者たちが輸送されたであろう避難場所。

 

 

 

そして、女性


名前は、春定カオル。26歳。
職業は、調理師。

目的地は、自衛隊の兄がいる避難場所。

 

 

 


それから僕らは色々語り合った。

 

 

年齢がわかるとどうしても敬語になるし、最初は苗字に「さん」付けで呼んでたけど、


1番年上であるレンが
敬語もやめて、下の名前で呼び合おうと提案した。

 

 

今日目の当たりにした光景。
この世界で生き抜くには、仲間が必要だ。

 

そして、できる限り目的地に到着するまで協力し合うこと。

 


幸いな事に、レンとカオルの向かう避難場所は同じ所のようだし、

さらに僕の実家もその避難場所から10キロも離れていない場所だった。

 

 

実家が避難場所に近い事から、
僕の両親はその避難場所に避難している可能性も高い。

だから僕も最初にその避難場所に行って、両親を探す事にしよう。

 

 

 

 

今日はとてつもなく長い一日だった。


見たこともない惨状の後だから
今夜は眠れそうも無いと思っていたけど、

2人との会話で少しだけ安心したような。


眠くなってきたからそろそろ寝ることにしよう。

 

 

睡眠は、2人が寝てる間に1人が見張り。
それを2時間交代にする事にした。

 

 

明日はどんな日になるのだろうか。