もしも日本がウォーキングデッドの世界になったら

もしも日本が海外ドラマ「ウォーキングデッド」の世界になったらという妄想終末世界ブログ。

3.赤への行列

 

 

 

 

大混乱で立ち往生する高速道路。

 

 

車の中で僕は後悔していた、

どうせ渋滞に巻き込まれるなら

 

まだ警察や自衛隊が先導・指揮していた

2日前に避難しておけばよかった、、、と。

 

 

 

 

何人もの人が車を出て道路上で

言い争いをしたり、嘆いている。

 

 

 

そんな中、2台前の車から

20代くらいの女性が60代くらいの男性を抱えて出てきた。

 

親子だろうか。

男性はぐったりしていて意識が無いようだ。

 

 

女性は慌てた様子で、父親らしき男性を道路上に寝かせ

必死で父親の体を揺さぶっている。

 

 

「お父さん!しっかりして!」

 

 

叫ぶ声に近くの人たちも気づき、集まってきた。

 

 

 

医療のことなんか全くわからなく何ができるわけでも無い僕も居てもたっても居れず、車から降りた。

 

 

 

 

後部座席の雪かきシャベルとビニール傘を放り出し、

その下にあったキャリーケースを取り出した。

 

 

道路の上にケース広げて

奥に押し込んでいたタオルケットを出して

倒れている男性の下に敷いてあげた。

 

僕にはそれしか出来ず。あとは見守ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

「そこ通して!」

 

 

 

野次馬をかき分けて、

僕と同年代くらいだろうか?

男性が親子の元に駆け寄ってきた。

 

 

どうやら彼は医者らしい。

 

てきぱきと脈をとったり応急処置やら何やらしている。

 

 

 

近くに医者が立ち往生していてよかったなぁ

 

 

なんて、すっかり病人も助かるもんだと

呑気なことを思っていたが、、、

 

 

医者がすっと立ち上がり

近くで見守っていた娘さんの肩に

ぽんと手を置き、俯いて何かを伝えた。

 

 

その瞬間、娘さんは泣き崩れ父親の元へ駆け寄った。

 

 

誰もが状況を理解した。

 

彼女の父親はすでに亡くなっていた。

 

 

 

どうやら持病が原因だったらしい。

 

 

 

 

 

亡き父親に抱きつき

声もなく泣き続ける娘。

 

 

誰もがかける言葉もなく

静まりかえる。重々しい空気が流れる。

 

 

 

 

この事態に気づいていない数十メートル先の人たちの

相変わらずの怒号とクラクションだけが異様に大きく聞こえた。

 

 

 

 

その時、

その騒音さえもピタッと止まった。

 

 

 

そして、さっきの怒号混じりの騒音とは違う

 

 

ざわざわとどよめきだした。

 

 

 

どよめきは、叫び声に変わった。

 

 

 

 

数十メートル先で何かが起きている。

 

 

 

 

僕の周囲の人たちみんな何事かと

叫びの聞こえる前方に目を凝らした。

 

 

車の列でよく見えない。

 

 

 

一人の男性が、車の上によじ登り

 

 

様子を眺めだした。

 

 

 

「、、、、ウ、、ウォーカー、、、、?」

 

 

 

 

その呼び名をSNSで知っていた人たちは騒めき出し、

 

何人かが同じく車に登り、スマホを取り出し

数十メートル先の「ウォーカー」を動画撮影しだした。

 

 

 

「ヤベ!マジ!?あれ本物?すげえ!」

 

 

 

動物園で珍しい生き物を見るかのように

彼らは撮影を続ける。

 

 

 

 

「ウォーカー」の名を知らない者たちは

何がなんだかわからず不安な表情を浮かべている。

 

 

僕を含め、「ウォーカー」の名を知っている者も

 

この時は全てを知っていたわけでは無かった。

 

 

 

 

 

ただの「歩く屍」。

 

 

 

しかし、実際は

「歩く」だけではなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『食ってる、、、、、』

 

 

 

 

 

 

そう言い、車の上で撮影していた若者が

青ざめた表情でスマホを下ろし撮影をやめた。

 

 

 

その場にい全員、車のボンネットの上に登って

 

向こうの様子を見た。

 

 

 

 

 

目を疑うような光景。

 

 

 

 

数十メートル先、いや、それよりもっと

数百メートル先、カーブで見えなくなるまで

きっとそれより先も

 

 

 

車の列と道路はみるみるうちにと

真っ赤に染まっていく。

 

 

 

 

無数のウォーカーが次々に

逃げ惑う人に食らいついている。